オンラインHDF 花クリニック

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花クリニック 院長あいさつ

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「急変なし長生き元気の血液透析」の実際
院長 矢花眞知子

以前横浜市立大学附属病院の透析室が6階にあった頃、透析室の窓から小柴の海がよく見えました。そんな時、金沢文庫で生まれ育った私が懐かしく思い出すのは、昔父が小柴の海で、幼い私を背中に乗せて亀さながらにすいすい泳いでくれたことでした。この亀泳ぎは案外難しく、長じてから自分で試してみると、親なら誰でもできるわけではないことが分かりました。

私が透析医療に従事するようになってから、ほぼ30年が経ちます。最近の10年間、私は花クリニックの院長を務めております。花クリニックは、全ベッドでオンラインHDFを実施するクリニックとして2006年に開院し、2016年に開院10周年を迎えております。

 

「急変なし長生き元気の血液透析」が花クリニックのモットーであり、ご覧のようにホームページに掲げております。このモットーが真に実践されているか否か、誠に勝手ながら自ら検証させていただきたいと存じます。

検証に際しましては、私が透析医として実現を目指した以下の1から4


  • 世界一低い透析低血圧出現頻度を達成すること(「急変なし長生き元気」に通じますが、「長生き」をもたらす理由は、後ほど解説させていただきます)。
  • 患者さんに100歳になっていただくこと(「長生き」に通じます)。
  • 無除水透析を行うこと(「急変なし元気」に通じます)。
  • 赤血球造血刺激因子(ESA)の投与なしで高ヘモグロビンが維持される患者さんに、お一人でも多くなっていただくこと(「元気」に通じます)。

がすべてクリアできていれば可とさせていただきます。
では、検証に入らせていただきます。

 
1 世界一低い透析低血圧出現頻度を達成すること

透析低血圧を起こしていると、透析中の患者さんを、悪心、嘔吐、あるいは下肢つれなどで苦しめます。だから、「透析は苦しい」と言われてしまいます。透析低血圧を絶対に起こさない透析方法があります。

それは緩徐血液透析(slow HD)という方法です。心不全などのため非常に重症になられた透析患者さんに、主として集中治療室で実施されます。連日10時間行い、1分間当たりの血流80ml、除水速度300ml/時を上限としています。私は、市大病院でこの方法を学び、目から鱗が落ちる思いでした。

「緩徐血液透析から通常の血液透析までの間に存在する幾段階もの透析条件のうち、患者さんお一人お一人の循環動態に見合った条件を設定すれば透析低血圧は防止できる」、このことに気づかされたのです。以後この気づきを、著作や講演を通じて公けにしつつ、実践を続けております。

透析低血圧の出現頻度は、一般的には20%とされています。ちなみに、「透析低血圧の出現頻度が、とびきり低い」という報告を探したところ、フランスのタサン透析センターで7.0%(1998年)、前田病院3.7%(2005年)、そして三田尻病院0.2%(2008年)でした。2011年の日本透析医学会学術集会では、世界一低い透析低血圧出現頻度、年間0.03%を花クリニックから報告させていただきました。

 
2 患者さんに100歳になっていただくこと

90歳代の透析患者さんの平均余命は、透析導入後半年とされています。

ところで、透析低血圧を起こしていると、脳の前頭葉が萎縮し、心筋梗塞や虚血性腸炎を発症するなどして死亡のリスクを高めます。超高齢者にとってのベストな透析条件等がまだ確立されているわけではありませんが、一般的には、栄養状態を良好に保つことや充分な透析量を確保することのほか、透析低血圧を起こさないことであると言われています。

以上のことを私も心がけてまいりましたところ、2015年に、透析歴8年の通院患者さんが、とうとう100歳を迎えてくださいました。8ヶ月後に亡くなられたのですが、認知症は生涯認められませんでした。2016年の透析医学会で発表させていただきました。

 
3 無除水透析を行うこと

「血液透析は尿がすぐ出なくなる、腹膜透析は尿がずっと出る」とよく言われます。血液透析について、果たしてそうでしょうか。

無除水透析とは、透析中に除水を行わない透析のことです。無除水透析の実施に際しては、体液量を調整できる尿量が確保されていることが前提です。尿として出るはずの水分を、先回りして透析中に除水してしまうと、尿量減少を招いてしまいます。尿量が確保されている症例を選び、その症例に除水をせずにいれば、ある程度の期間、無除水透析が実施可能であることをみてまいりました。

通院患者さんの中に、血液透析導入後10年11カ月の間尿量が確保され、この間無除水透析を行えた方がいらっしゃいました。2012年の透析医学会で発表させていただきました。世界最長では、12年間の無除水透析が報告されています。

 
4 ESAの投与なしで高ヘモグロビンが維持される患者さんに、お一人でも多くなっていただくこと

ESAを投与しなくても、高ヘモグロビンが維持される患者さんの出現頻度は、これまでの報告では1.8%とされています。花クリニックでは常時10%前後です。この頻度を、2015年の透析医学会で報告させていただきました。

オンラインHDFでは貧血が改善すると言われていますが、私は、「それも否定はできないけれど、透析低血圧を防止することによって、腎臓や骨髄など造血に関わる臓器を虚血から守り障害を加えないことも大いに関与しているのではないかしら」と、内心考えております。

以上、検証の結果は可とさせていただきます。自己判断によるところを少なからず書き連ねましたこと、何卒ご容赦のほどお願い申し上げます。

花クリニックの窓からは、金沢文庫の街並みと緑の森、そしてところどころ雲を浮かべた大きな青空が見渡せます。時折眺めて目だけ休めつつ仕事に専念しております。最後になりますが、今後も一透析医として力を尽くしてまいりたい所存でおります。何卒よろしくお願い申し上げます。

 
院長 医学博士
横浜市立大学医学部非常勤講師
矢花眞知子
出身大学
東京教育大学(現筑波大学)理学部卒
横浜市立大学医学部卒
専門資格
医学博士
日本透析医学会専門医・指導医
日本腎臓学会学術評議員
日本腎臓学会専門医・指導医
日本アフェレシス学会専門医
日本内科学会認定医
矢花院長が産経新聞の取材を受けました。血液透析専門医として独自の持論が紹介されています。
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